子宮動脈塞栓術
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よくある質問と答え

Q1.子宮動脈塞栓術とは簡単に言うと何をするのですか?

A.カテーテルと呼ばれる細い管(太さ1.3mm)を太ももの付け根辺りから動脈内まで挿入し、]線透視で見ながら管の先を左右の子宮動脈の中まで誘導した後、塞栓物質(詰め物)を注入する治療です。

Q2.治療はどんなところで、誰が行うのですか?

A.この治療は血管造影技術を応用しているため手術室の中の血管造影室というところで行います。放射線科医師と産婦人科医師が協力して行います。術前、術後の管理は産婦人科医師が担当します。

Q3.塞栓術の技術的な成功率(両側の子宮動脈を詰め物で確実に血流を遮断できる率)はどの程度ですか?

A.96〜98%と言われていますが上手くいかない場合もあり、その原因は主に子宮動脈の攣縮および血管走行の複雑さです。前者はカテーテルやガイドワイヤーと呼ばれるカテーテル誘導用の針金による機械的刺激で、子宮動脈が縮み上がる現象です。いったんこれが起こると治療できずに終わる可能性もあります。マイクロカテーテルと呼ばれる極細の管を利用する事により、攣縮は起こりにくくなりますのでマイクロカテーテルを使用する場合があります。

Q4.子宮動脈から注入された塞栓物質は筋腫を栄養する血管だけを塞ぐのですか?
       もし正常組織を栄養する血管も同時に塞ぐのであれば、正常な子宮組織も障害をうけませんか?

A.使用する塞栓物質の粒子は直径0.5−1.0mm程度と比較的大きく、毛細血管と呼ばれる細かい血管の網目には到達しません。子宮筋層、内膜などの正常組織は、周囲組織の血管(卵巣動脈・膣動脈)と血管同士のつながりを持っているため一時的に塞栓の影響を受けますがすぐ回復するので塞栓の影響は受けません。一方、筋腫内部の血管は、子宮動脈以外に周囲子宮組織とつながりをもたないため、血流が途絶えて組織の死滅(壊死)や変性(細胞の活動性がなくなった状態)を生じます。  塞栓直後に強い痛みが生じるのは、正常組織においても血流が著しく低下(虚血)するためと考えられます。しかし、塞栓物質であるゼラチンスポンジの大きさを大きくすることにより、筋腫以外の正常組織が塞栓される可能性が減少するため、塞栓後の痛みが大幅に軽減されることが分りました。筋腫以外の組織では早期(おそくとも一ヶ月以内)に周囲組織との血管が再開通して元の血流まで改善し、正常組織に障害を起こしにくいと考えられます。しかし最近症例が増加するにつれ極めて稀ですが正常子宮内膜も塞栓の影響を受け無月経になる例も存在することが判明しました。

Q5.塞栓を受けた筋腫はその後どうなるのですか?

A.壊死(組織が死滅した状態:動脈が途絶えて組織が壊死を起こすことを梗塞と呼びます)もしくは変性(細胞の活動性がなくなった状態)になります。筋腫がこれらの状態になると時間の経過とともに縮小します。なんの治療もしていなくとも、しばしば筋腫内に多少の壊死や変性は生じています。塞栓術は人工的にこれを起こしているとも言えます。

Q6.変性・壊死した組織を体の中にかかえておくことに問題はありませんか?

A.感染さえ起こさなければ、なんら問題はありません。脳梗塞や心筋梗塞といった皆さんよくご存知の病気は、動脈が詰まって組織の壊死が起こった状態ですが、これらの病気で壊死した組織を除去するための手術を通常おこなう事はなく、ずっと壊死組織を抱えた状態です。これと同様に、壊死した筋腫組織が体内に残存している事自体は問題となりません。ただし、子宮腔内に突出した粘膜下筋腫や子宮内腔に接する筋腫の場合では変性壊死した筋腫が膣の方から上がってきた雑菌によって感染する場合があります。変性した筋腫が感染をおこすと自然に膣の方に脱落してきますが、もし脱落した筋腫が排泄されずにひどい帯下、下腹痛、微熱を生じた時には子宮内膜掻爬などの手術が必要になります。

Q7.塞栓物質が子宮動脈以外に流れていく事はないのですか?流れていった時になにか障害を起こしませんか?

A.子宮動脈内に管を入れて塞栓物質を注入する際に圧をかけすぎて子宮動脈の根元から溢れ出た場合、膀胱を栄養する動脈やお尻の組織を栄養する動脈を塞いでしまい壊死を生じる可能性があります。まだ論文としての報告は見られておりませんが、国内のある施設でそのような事例があったそうです。また子宮動脈と卵巣動脈の間には、その太さに個人差がありますが、吻合(つながり)がありますので、塞栓物質はある程度卵巣に到達すると考えられています。しかし、卵巣は子宮以外にいろいろな所からの血管と連絡しているため卵巣機能不全になる危険性はあまり高くありません。

Q8.]線を使うという事ですが、放射線を浴びる事で何か障害が起こりますか?

A.女性骨盤に]線透視・撮影を行った場合に問題となるのは、卵巣機能障害(不妊・ 無排卵)と皮膚障害(脱毛・皮膚炎・皮膚潰瘍)です。これらについては、この程度の量の放射線を浴びると障害を起こすという値(閾値)があります。熟練者が治療手技を行った場合の卵巣の被曝線量は平均10-20cGyで、その閾値(200cGy)に達する事はまずなく、基本的に心配はいりません(皮膚の被曝線量についても同様)。

他に放射線の影響として、被曝した各組織における癌の発生や、治療後に妊娠・出産する場合の子孫への遺伝的な影響の可能性もあります。いずれにおいても、この治療手技による被曝量は、放射線以外の環境因子(食べ物、化学物質等)による悪影響と区別できない程度のわずかなリスクです(もちろん少ないに越したことはありません)。

Q9.塞栓に使うものについて説明してください。どのような物を使うのですか?安全性は?

A.ゼラチンでできたスポンジを小さく砕いて使用します。当院では「スポンゼル」と言う物質を使用しています。日本では薬剤、医療材料としては、いずれも塞栓物質としての利用は認められておりませんが、日本国内のUAEの90%以上、肝臓がんの塞栓療法にも広く使用されております。また手術の際に出血部位に貼付して止血剤として用いられます。歴史的にもその材質自体の安全性に問題があったとの報告は見られていません。ゼラチンスポンジは、約一ヶ月で体内に吸収され消失します。当然血管が再開通することがありますが、塞栓により血流が遮断された筋腫はすでに壊死していますので、子宮動脈の血管が再開通しても再び大きくなることはありません。

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