子宮動脈塞栓術
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UAEを希望される方へ

費用
健康保険が効かないので2泊3日入院の自費診療となります。費用は、全体で約45万円かかります。
どのような症例に子宮動脈塞栓術を行うか
子宮筋腫があり、そのための症状で悩み子宮動脈塞栓術を希望する症例に行います。前もって術前検査で妊娠、悪性腫瘍の存在、感染症、重篤な合併症の存在などを否定しておきます。挙児希望者、子宮腺筋症の場合も、希望者には私どもは子宮動脈塞栓術を行っています。
子宮動脈塞栓術施行医師
子宮動脈塞栓術は主として子宮動脈塞栓術に精通した放射線科医師が行い、久我山病院では産婦人科医師も必ず一緒に塞栓術に立ち会い協力します。症例の選択、入院管理、術後の経過観察は産婦人科医師が行います。
子宮動脈塞栓術の方法

穿刺する右鼠径部に局所麻酔をした後に右大腿動脈から挿入した細いカテーテルを、まず反対側の左子宮動脈まで挿入し造影剤を用いて血管造影を行います。次に塞栓物質(ゼラチンスポンジ、3-4週で溶けてしまう)を注入、左子宮動脈を塞栓します。再度、造影剤を用いた血管造影で、完全に筋腫核子宮動脈が塞栓されたことを確認します。左子宮動脈塞栓後は、同じカテーテルを引き戻して右子宮動脈に挿入し、同様の手順で右側も塞栓を行います。
子宮動脈塞栓術後に穿刺部の皮下血腫,血管損傷の報告も見られますが私どもは経験していません。

    


子宮動脈塞栓術に要する時間は子宮動脈の走行の個人差にもよりますが、挿入しやすい症例では全体で約45分、血管の走行が複雑でカテーテルが挿入しにくいような症例では2時間近くかかることがありますが、平均1時間程度です。
子宮動脈塞栓術中にあびる放射線の量は、消化器のX線検査の時にあびる放射線の量と同じ程度と言われています。

子宮動脈塞栓術時の痛み

術前から、持続的に鎮痛剤投与を行うPCAポンプ(patient-controlled analgesic pump,下図参照)を開始します。両側の子宮動脈の塞栓を行うことにより、塞栓終了30分くらい後から激しい月経痛様の下腹痛が起こります。塞栓後の痛みは内臓痛と言って、今まで硬膜外麻酔等も試みましたが、この痛みを完全にコントロールすることが出来ませんでした。しかし、最近では塞栓物質の細片を大きくすることにより塞栓後の激しい疼痛はかなり軽減することに成功しました。

PCAポンプ


痛みには個人差がありますので、この方法でも完全に術後疼痛を除去することは出来ない場合もあります。疼痛の強い場合には、さらに非ステロイド系抗炎症・鎮痛剤:NSAIDs(nonsteroidal antiinflammatory drugs)を併用します。塞栓術後の疼痛は術後3〜4時間後にはほぼ自然消失します。術後翌日には、症状改善している場合が多く、翌日の午後退院としています。術後1週間ぐらいは微熱、軽い腹痛を認めることがあります。退院時に抗生物質と鎮痛剤を処方しますので、抗生物質は毎日、鎮痛剤は必要時に服用してください。念のため術後1週間は自宅安静とし、支障がなければ日常の家事は可能です。何か異常を感じたらすぐ来院して下さい。術後疼痛が激しいため、入院期間の延長、再入院が必要な場合もあります。

子宮動脈塞栓術当日の注意
術後は、穿刺した鼠径部の右大腿動脈の部分を5〜10分ぐらい手で圧迫止血、その後は絆創膏で強く圧迫固定しておきます。病棟に戻られましてから術後3時間はベッド上で安静にして、動脈を穿刺した側の右足を動かさないで下さい。飲食は術後より可能です。3時間後ぐらいには、状態に応じてトイレ歩行は許可しますが、絆創膏固定は翌日まで続けます。
術後の経過観察
術後1週間くらいは軽度の疼痛、微熱等ある場合がありますから、可能なら術後1週間はいつでも休める体制にしておいたほうが良いと思います.勿論何ともなければ出来る範囲で家事、軽い仕事をしても差し支えありません。退院1週後に症状の聞き取り、診察、経腟超音波検査、炎症の有無などをしらべ、術後1か月、3か月、6か月、1年、以後6か月毎に術後5年間症状の聞き取り、診察、MRI検査、経腟超音波検査などを行い治療の効果を判定します。
術後の筋腫核の縮小率
早い例では術後1か月後から縮小し始め、その後も徐々に縮小は続きます(最大で筋腫核体積の30%ぐらいに縮小します)。
術後の症状の変化
術後1か月から月経血量、月経痛の減少がみられます。したがって貧血に対する薬剤の服用は必要なくなります。
術後の再発
今のところ子宮動脈塞栓術後の筋腫の再発は無いと言われています。若い人では再び新しい筋腫が発生する可能性があると言われています。
不成功例
子宮動脈の血管走行が複雑な場合や、動脈が細かった場合は、子宮動脈塞栓術が出来ないことが見られます。今までに1例は日を変えて再度子宮動脈塞栓を行い塞栓成功、1例は術後来院していないので詳細は不明です。以上の2例以外に両側の子宮動脈が塞栓出来なかった例は2007年末まで経験していませんでしたが、2008年に入り片側の子宮動脈にカテーテルが挿入出来ない例が1例見られました。この症例に対しては、可能であればぜひ再度UAEを試みたいと思っています。今後UAE症例が増加するとこのような症例はごく少数とは思いますが見られる可能性はあると思います。
術後変性筋腫の感染
漿膜下筋腫、筋層内筋腫などは子宮動脈塞栓術後に変性、縮小してやがて瘢痕組織に変わりそのままの状態で存続しますが、人体に悪影響は有りません。しかし粘膜下筋腫や筋腫核が子宮内腔に接するような場合は、塞栓によって変性した筋腫核が、腟の方から上ってきた細菌により感染を起こすことがあります。UAE後に変性筋腫の感染の可能性がある場合は前もってお話ししますが、術前予想されなかった変性筋腫の感染が起こることもあります。
粘膜下筋腫の場合は、小さいものでは術後1か月くらいから悪臭のある帯下が増加し、出血とともに肉の塊状のものとして排出されてきます(時には本人が気づかないこともあります)。大きな粘膜下筋腫の場合は、次に述べる子宮内腔に接するような筋腫核の場合と同様な処置が必要です。子宮内腔に接するような大きな筋腫核の場合は、変性した筋腫核が、粘膜下筋腫の場合と同様に腟の方から上ってきた細菌により感染を起こすことがあります。術後2〜3か月以降に発生することが多く、時にはUAE後数年して起こることもあります。軽度の発熱、下腹痛、悪臭のある膿のような帯下が多量に出てきます。筋腫分娩といって自然に腟内に排出されてくることもあります。しかし自然に排出されてこない場合は、変性、感染を起こした筋腫核を取り出す必要があり、除去すればその筋腫核は全く消失します。変性筋腫が大きくて(大きい時には径10cm以上のこともあります)外来で除去不可能の場合には、入院の上、麻酔をかけて子宮内容掻爬術を行うか、子宮鏡で子宮内をのぞきながら変性筋腫を除去(子宮鏡下子宮内容除去術、Trans Cervical Resection,TCR)することが必要となります。この様なケースではTCRの技術を持った医師、器械が必須です(当院では施行可能です)。通常は2〜3日間の入院が必要です。一回で全て除去出来ない場合は、日を変えて何回か治療を反復するため入院期間も延長します。
挙児希望者に対する子宮動脈塞栓術
子宮動脈塞栓術は、欧米でも約10年、日本では5年少しの歴史しかありません。世界中でも、現在まで100例近くの妊娠例が報告されていますが、今後さらに増加してくると思います。私どもは杏林大学で4例の妊娠、分娩例を、久我山病院で2例の流産を経験しております。子宮動脈塞栓術を行うと、筋腫核は変性、縮小しますが、その他の正常筋層、子宮内膜には影響がなく、塞栓術後の妊娠に影響を与えないと考えられていました。しかしUAEによって筋腫核だけでなく、子宮内膜も影響を受け、子宮内膜がホルモンに反応しなくなり無月経(子宮性無月経)になり不妊になった症例を経験しました。このため、ごく稀ではありますがUAE後に無月経になる可能性があること念頭においておく必要があります。また子宮内膜に影響がない症例でもUAE後に筋腫核が完全に消失するわけでなく、縮小した筋腫核はそのまま筋層内に存在するため、筋腫の全く無い症例に比べて、妊娠しにくく、妊娠、分娩経過をみても流産、早産、帝王切開になる可能性が高いといわれています。前もってこれらのことを充分説明した後に、御希望が有れば挙児希望者にも子宮動脈塞栓術を行っています。
子宮動脈塞栓術後の無月経
比較的閉経期に近い45歳以上の症例、もともと月経周期が不規則な症例ではUAE後に10%弱無月経になってしまうことがあります。正常の月経周期の症例でも、UAEを行うことによる影響などで無月経になることがありますが、時間とともに回復する場合と、ごく稀ですが無月経が続くことがあります。私どももUAE後の無月経を17例経験しています。無月経になる原因としては,1)無月経になる頻度の高い40才後半の症例では閉経期に入ったため、2)比較的若い人では卵巣動脈がUAEによって閉塞されるためなどと言われていました。しかし、たとえ子宮動脈塞栓によって下方から卵巣動脈が閉塞されても,卵巣には他からの栄養血管が豊富にあり血行を支えているため卵巣機能は障害されません。このことはホルモン測定によって正常の値を示していることからも明白です。子宮内膜もUAEの影響でホルモンの反応がなくなる場合があり、このため無月経になることもあります。
子宮腺筋症に対する子宮動脈塞栓術
子宮の縮小効果は子宮筋腫の場合より少ないですが、激しい月経痛、過多月経などの症状は、子宮動脈塞栓術によって軽快します。従って鎮痛剤以外良い方法がない子宮腺筋症の月経痛に対しては、子宮動脈塞栓術は激しい月経痛を軽減する方法として有効であると考えています。しかし子宮筋腫と異なり腺筋症では子宮動脈以外の多くの血管から栄養されているため、UAE後再び血流が戻って1年後ぐらいで半数近くの症例で症状が再開してくる可能性があります。
子宮肉腫
子宮肉腫の頻度は、子宮手術患者の1%以下と言われ、頻度の少ない疾患ですが、極めて悪性度が強く、特に有効な治療法もなく致命的疾患です。術前に子宮肉腫を診断することは、進行した症例以外は多くの場合困難です。塞栓術後に子宮肉腫が発見された症例を我々も1例経験しており、世界でも5-6例報告されています。

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